山中 健

2020 02 Jun

コロナ禍によるアパレル業界への影響と「ターニングポイント」

www.j-wave.co.jp/original/tmr/scale/13851.html

 

 

昨日の6月1日、「J-WAVE TOKYO GOOD MORNING RADIO」の「GLOBAL SCALE」で、事前取材した私の音声がMCの別所哲也さんのナビゲートの中流れました。

テーマはタイトルにある「コロナ禍によるアパレル業界への影響とターニングポイント」。国内外のアパレル業界はなぜ厳しいのか、今後どのようなチャンスがあるのかなどをお話ししました。業界以外の方にもお伝えできるようなるべくシンプルに、そして業界の方々のエールも込めてお話ししたつもりです。

 

全体で5分間ですが、素晴らしく編集していただき感謝いたします。この取材の前に色々と考えたことをここで紹介させていただきます。

 

「店舗政策はどうなるのか」

 

一部の企業を除いて、先進国ではスケールメリットを生かしたアパレルマーケットの拡大は困難。そしてインバウンドや新興国進出もコロナ禍によって妨げられています。「店舗数 x一店あたり売上高=全体の売上」という市場シェア主義の方程式でオーバーストアになっていましたが、コロナ禍によって強制的に縮小されていくことは避けられないでしょう。

コロナ禍前から、EC化率が高いマーケットでは、リアル店舗の役割は変わっていました。デジタルテクノロジーの最先端をいつも発信し続けたNYではすっかりと小売のリーダーが様変わりしていましたし、中国ではリアル店舗の成熟を飛び越えてアフターデジタルの世界が広がっています。EC化率トップクラスである英国はクリック&コレクトや非接触型決済は当たり前、伝統的な小売業のインフラやサービスはデジタルテクノロジーが支えています。

日本は、世界名だたる高坪効率の国。特にファッションは異例中の異例。なのでリアル店舗が強すぎて、先にあげた国ほどEC化率が進んでいませんでした。しかし、このコロナ禍で、DXが加速。以前はリアル店舗がまずあって補完するECという役割でしたが、今後はECをはじめとするオンライン・SNSが基軸になっていき、店舗はコンタクトポイントの一つとなっていくのではないでしょうか。

ただ、店舗がいらなくなるということではなく、スペシャルなものとなっていき、中途半端な店は淘汰されるということです。旗艦店と支店という店舗政策が多いですが、支店の中で淘汰される店は増えるでしょう。淘汰される店は商圏不相応な店です。成長期に無理して出した店はどんどん撤退していきますので、商業施設の優劣はこれまで以上に増えていくでしょう。また、ピックアップストアのような業態もファッションで生まれるかもしれません。アメリカの「ノードストロームローカル」のようにピックアップサービスとサービスカウンター、カフェが融合したサロンなどの誕生も期待したいところです。

 

「ファッションの企画も変わる」

ファッションは「憧れ」と「共感」。日本は「憧れ」の要素を「共感」できるレベルまでブレイクダウンしていくという企画アプローチでビジネスを伸ばしてきました。その憧れの要素の一つが「トレンド」や「セレブリティー」。ここから生まれる企画の種を顧客の生活スタイルや価値観に合わせて提案してきたのです。しかし、その根底たる「社会のマクロトレンド」が変わっていくのです。「ウェルネス」や「サステナブル」の価値観がさらに広がり、次から次にファッションを買うことに疑問を感じる層は以前からいましたが、それが広がるのでしょう。

平均年齢40代後半という「大人の国」日本では、長く使えるものへの支持が広がり、アンチトレンドへのシフトも進むと思います。「タイムレスファッション」という概念です。長く着ても映える良質な定番アイテム、時間も場所も超えるクリエーションなどです。もともと言われてきたことだが、さらに進むのではないでしょうか。日本人のだからこそボリュームはそのようになるでしょう。これらを推し進めるプラットフォームがD2Cなどだと思います。

 

今、再開した現場は多くの悩みの中にいることと思います。意思決定をする方々は未来から、そしてマクロに考えてジャッジしていくことが必要です。その一助となればと思い、お伝えした次第です。

 

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