山中 健

2020 29 Feb

ロンドンレポート2020冬3 英国百貨店の新潮流

今回は先月回ったロンドンの百貨店についてレポートします。半年前と比べさらにどんどん進化している百貨店、あまり変わり無い百貨店など様々です。ここでは中高級百貨店を中心にレポートします。

■百貨店の枠を超える業種・ブランド編集「セルフリッジズ」

ロンドンに行くと必ず行く百貨店「セルフリッジズ」。行くたびに大きな発見があるのですが、今回もやっぱり面白かったです。

「セルフリッジズ」は、2018年の秋に大きな改装をしました。サブエントランスを、有名デザイナーを招いて改装したり、メンズフロアのストリート系売場にスケートボウルを設置したりして大きな話題となりました。業種構成だけでなく、各売場の編集レベルももちろんキープ&アップスケールしています。また、編集しているブランドには、アメリカのストリート系セレクトショップ「キス」、人気D2Cプレイヤー「リフォーメーション」、フランスのオンライン発ブランド「セザンヌ」など、従来の百貨店では考えられないようなものもあります。

 

そして、今回びっくりしたのはセルフリッジズの中に、映画館ができていたことです。SCの上層階にシネコンがあるのは今や当たり前ですが、百貨店の売場と連動して配置するというのはとても珍しいことです。ただ映画館を併設しているのではなく、セルフリッジの高感度イメージに相応しいラウンジやシネマルームを設置していました。

 

■ラグジュアリー&インバウンドシフトの「ハロッズ」

英国のデパートと言えば、「ハロッズ」。日本の百貨店が長らくモデルにしてきたデパートです。マスコットであるテディベアやオリジナルパッケージの紅茶、お菓子などは全世界で販売されており、名実ともに英国一のデパートですが、いい意味でも悪い意味でも老舗感が満載でした。しかし、2019年から改装を進め、生まれ変わりました。外観はこれまでどおりの歴史ある佇まいですが、中はラグジュアリー&インバンドにシフト。英国の歴史ある百貨店というか、新興国のラグジュアリーモールという感じです。

ブランド選定も、有名どころは全て持ってきたという感じで、ファッションウィークに出ているブランドはもれなくピックアップ。ラグジュアリーだけでなく、オフホワイト、マルセロブロン、パームエンジェルなどをプッシュしており、若い富裕層を狙っていることが一目瞭然です。

そして、全てのフロアにテーマ性の強いレストランを配置。フロア全体をライフスタイル編集にしています。また、各フロアのエレベーターホールにはサイネージを配置。中にはオリジナルの音楽コンテンツ紹介のものも。

 

 

小売のトレンド要素を全て詰め込んでいはいますが、あまりにも煌びやかでバブルっぽい世界。歴史ある百貨店なのに、上品さに欠けるという不思議さを感じる出来上がりでした。

改装などで進化しているのはこの2つの百貨店。「ハロッズ」と同じナイツブリッジにある「ハーベイ・ニコルズ」は何も変わらず。ファッショナブルな百貨店ですが、ひと昔前のイメージ。「リバティ」も、2年ぐらい前の売場開発以降は落ちついていますが、編集力はさすが。イキのいいブランドを独自の視点で編集しています。メンズ編集売場にはヴィンテージコーナーも配置し、目利きも満足するものになっています。

 

■ハーベイ・ニコルズ

 

■リバティ

 

ただ、やはり消費の厳しさを感じることが多かったのも事実。「リバティ」は会員向けのセールをプロパー新品対象に行っていましたし、経営破綻が報じられた大衆百貨店「デベナムス」は営業こそしていましたが、抜けがらのよう。前に進まないと、生き残ることができない。そのためには規模を求めるのではなく、独自性、付加価値を追求し強くならなければならないと感じた次第です。

 

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