生地 雅之

2021 08 Mar

百貨店の消えた売上

コロナ下、緊急事態宣言もあり、商業施設の売上の低迷が止まりません。

まだ安定しているのは必需品の食品をメインにする食品スーパーやGMS(食品比率2/3以上)であり、百貨店(食品比率1/3程度)やファッションビル、ショッピングモール等は衣料品比率も高く、売上そのものも大幅減少しています。

百貨店層でさえ百貨店の食品売場まで閉鎖すれば、食品スーパーやGMSの食品売場へ流れてしまうのです。衣料品等は必欲品のため購入しないでも生活できますが、、

 

チャネル別顧客実態

コロナ下で苦戦している百貨店の現状をみると、コロナは関係なく過去から変化しつつあったのです。

まず、ルミネやパルコのようなファッションビルは駅または近くに立地し、トラフィック(交通手段)は電車か一部バスで、顧客ターゲットは女性がメインのシングルかDINKSで、可処分所得が高いのです。

 

ららぽーとやイオンモールのようなショッピングモールは郊外にあり、トラフィックは車で駐車場代がほとんど掛からず、家族で1日楽しめる環境(過去の一般層が利用していた百貨店の位置付け)で、ターゲットは子供を含めたファミリーなのです。

よく見るとファッションビル顧客の卒業生なのです。結婚して子供が出来、住居は賃貸でも、マンションでも経費が掛かり、学費も含め、可処分所得が低くなっているのです。

よって、ファッションビルとショッピングモールの展開ショップのレベルも異なっているのです。

 

ファッションビルには感度が高いセレクトショップが多く、ショッピングモールには価格ラインも含めベーシックなファッションショップが多いのが実態です。価格や品質面から言うとファッションビルでさえ百貨店の価格の50%程度であり、ショッピングモールは40%程度、GMSの平場は20%程度なのです。ここ30年以上前にはGMSで衣料品等を購入されていた方の一部は、品質面よりも見た目優先のお客様はファッションビルに流れ、普段着的で見た目も少しはという方はショッピングモールに流れているのです。品質面はGMS衣料品の一部も向上してきていますが、

 

百貨店の消えた売上はどこに

百貨店層は可処分所得が減少しても、余程でない限り生活の質を落としたくないのです。例えば5万円の本革のバッグを年間2個購入されていた人が購入できなくなった場合は、年間1個にするか、アウトレットで同質の型落ち商品を30~50%OFFで年間2個購入するかなのです。要は急にSCの展開店舗で1万円以下の合皮のバッグに流れる人は稀なのです。

 

百貨店客がファッションビルやショッピングモールに流れたり、ECに取られたりという事は認識違い(百貨店売上の減少額がECの伸びている額に近いだけで、実態は異なるのです)で、生活の質を落としたくないので、百貨店層は欲しい商品があるアウトレットや百貨店ECに流れるのです。百貨店EC化率は2%程度なのです。現在のエイジの高い顧客層がアウトレットはともかく、商品を触れないECに向いていないだけなのです。

 

また、百貨店のスーツ売上がコロナ下のリモ―トワークで低迷と言われている方もいらっしゃるのですが、現実百貨店の紳士服売上は全体の6~7%(伊勢丹新宿店のメンズ館は15%強もあり、それを含んで)であり、その中でのスーツを含む重衣料売上は1/3にも満たないので、百貨店全体の2%程度なのです。それもドレスコートやシャツ、ネクタイ等も含めてなのです。

スーツ業界における百貨店でのスーツ売上比率は着数で5%程度であり、ほとんどロードサイドで、その他GMSに集約されているのです。

 

百貨店の食品売上が、GMS同様に2/3あると思われている人も含め、実態を知らないと判断を間違うのです。

百貨店の食品売上比率は都心型と言われる立地の百貨店(全体の70%)では28%程度であり、地方・郊外型と言われる百貨店(全体の30%)では35%程度であり、総平均は一部東京大丸のような食品売上比率が高いお店もありますが、それを含めて30%程度なのです、

 

百貨店の安定している食品売上以外の低迷は、欲しい商品が少なく、購入しないでも生活できるから買っていないだけなのです。他に流れている訳ではなく、消えてしまっているのです。

次週(3月15日付け)ブログの「百貨店再生方法」との2部作ですので、次回も是非ご一読下さい。

 

これからの方向性も、既存で過去やってきており、現在忘れている営業施策も記載していますので、ご一読頂ければ幸甚です。

 

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

 

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。

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