生地 雅之

2022 27 Jun

迷走するGMSは何処に行く?

イオンリテールやイトーヨーカドーの決算が発表され、各社トップのコメントも一巡しました。
イオンリテールはGMS事業は大きな赤字であり、テナント事業は黒字でも合計での赤字に転落し、イトーヨーカドーは黒字とは言え、利益の大きな減益は否めない事実です。

各社手を拱いている訳ではないのですが、勝ち組のビジネスパターンを見失ったままなのです。何が問題かも見えていない状況なのです。原点はすべて「お客様」にも関わらず、お客様が真中にいないのです。FRのTOPでさえ「お客様が真中」と言っているのに,、「真中にはお客様がいなく真中には機械(ロボット)」がいるのです。

イトーヨーカドー(以後IY)は3月に就任した新社長が旗振りを実施し、改装に命を懸けた施策であり、前年よりは良くなっている様なのですが、今迄がどうしようもないレベルだったので、前年比が向上する事は当然なのです。良くなることは悪い事ではないのですが、

やって見ないと判らないと思い、TRY&ERRORしているので、プロなら最初から判っている事や、何が原因で効果が出ているのかの検証もままならない状況です。例えば、背の高い什器を多用されてはいますが、お客様にとっての見易い高さから言えば逆行しているのです。

例えば、木場店や八柱店等の改装は背の高い什器を多用しているのですが、上記のように改装結果が前年実績を上回っているので良しとされているようで、その高さが貢献したとは思えないのです。他の効果によって押し上げられた実績に埋没している事に気が付けば、

ユニクロが1勝9敗でも「勝ち組」といわれても、その1勝がフリース等であり、9敗が野菜の展開等や∔Jやマルニとのコラボ等の失策が見えなくなっている事を見抜けば、効果のある施策と効果の無い施策を認識する事が欠けている事に気が付いて頂きたいものです。イオンリテール(以降AR)も同様であり、両社とも勝ち組のビジネスモデルを手に入れていないのです。

要は、無人販売に徹する売場がまず勝ち組の入口であり、お客様に判り易い売場構築が最優先されるべきなのです。
過去はARの商品力もIYよりは劣っていたのですが、多少改善している事とIYの商品力のレベルが下がってきている事により、ほぼ同レベルになっているのです。まだまだお客様が欲しいと思って頂ける商品比率は小職の目には5~10%程度もないように見受けられるのですが、

GMSの基本は衣食住のワンストップショッピングができる環境を前提として、お客様にとって、
①    見やすい(判り易い)売場なのか?
②    買いやすい売場なのか?(当然セルフで)
に尽きるのです。

そのために、お客様のデータ(買った人のみがお客様)が重要となり、既存顧客のみを今後も追い続ける視点が重要なのです。そこが精一杯やっていても伸びないので、新規顧客を狙う、商品MD幅を広げる等と効率の悪い道にドンドンはまって入っているのです。「精一杯やっているとの勘違い」からの脱却が必要なのです。

如何に現在の商品で、既存顧客の買い回りを高め、一客単価の向上を狙うべきです。勿論小売業は客数X客単価が売上なのですが、客数を落とさないようにすることは必要なので、そこは手を緩めるべきではないのですが、既存客の維持に現在のSKUが必要なのでしょうか?

小売業は如何に少ないコンテンツ(商品幅)で、如何に高い売上を確保するかに掛っており、最近話題のオーダーにシフトする前に、如何にカスタマイズ&ローカライズに徹底できているのかに掛っていると言っても過言ではないでしょう。

先日もデロイト(大手コンサル)のイオンデータのIYへの情報漏洩問題(IYよりダイヤモンドへリークと聞こえるのですが)も、自社がどうあるべきかがまともでない企業に、何故他社の動向が気になるのでしょうか?全く理解できないのです。勿論、コンプライアンスの遵守も出来ていない事に大きな課題も存在するのですが、

自社・自店の顧客のマスを意識し、モノづくりはマスに徹底し、如何にお客様にパーソナルに売るかに掛っているのです。モノづくり(生産)までパーソナルにして儲かる筈もないのです。工場の生産はロットでコストが決まるのですから、自社・自店のVISION(どうあるべきか?)が見えていない事に尽きるのです。

お客様のデータを徹底把握し、その必要な商品を構築し、セルフで判り易い売場構築の徹底が最優先されるべきで、このビジネスモデルを構築出来うるプロが不在なのです。単純に「知恵」は外部で、「作業」は内部でを徹底すれば改善の道は拓けるのです。何でも自社ではなく、(理想と現実のギャップ)を真摯に見つめれば見えてくるのです。

現在は自社・自店がこれからどうあるべきか、それに向かって現状からどう進むべきかを構築する必要に迫られてきています。経済環境は間違いなく変化の兆しが見えています。どう変わるのかは別として、その中での自社・自店は何をすべきかが問われているのです。

是非とも、健全なる企業経営に向けて、早急に改善・改革される事を祈念致します。
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