北村 禎宏
イースター島の森林破壊
先のブログでOECDによる国際調査(PISA)について言及した。今年度の問題の全容がアップされるのは少し先になると思われるが、イースター島に関する設問の内容が一部報道されたので触れてみる。
限られた情報によれば、森がすっかり消失したのは、ネズミによる食害か、それとも住民による乱伐のせいなのかという問いだったようだ。両説とも不十分で、さらなる研究が待たれるとの解答もありというオチもついているという。
イースター島の末期については、これも先のブログで引用したジャレド・ダイヤモンドの別著「文明崩壊」で第2章で詳細が議論されている。10年近く前の議論なので、当然その後の研究が進展しているものと考えられるが、重要なポイントを引用してみたいと思う。
ダイヤモンドの議論では動物による食害は触れられていない。乱伐の要因のひとつは亡くなった人々の火葬に大量の燃料を必要としたとある。ダイヤモンドは森林破壊の前提条件として、9つの影響要素を列挙している。
1.湿潤ではない乾燥した島
2.赤道付近ではなく高緯度にある寒冷島
3.新しい火山島ではなく古い火山島
4.火山灰が降下しない島
5.中央アジアからの風送ダスト(黄砂)に近くなく遠い島
6.マカテア(珊瑚を源泉とする岩石)がない島
7.標高が低い
8.近隣関係のない隔絶された島
9.比較的小さい島
これらの9要素を眺めてみると、まずはイースター島における森林消失はロケーションによるサステナビリティの不足がバックグラウンドとしての主要因であったと考えられる。その極めて限られたサステナビリティの条件下において、人間の手による過剰伐採が持続可能時間を短縮化して、動物による食害も少なくない影響を与えたと結論付けることができる。
さらには、地球上の各地でかつて繰り広げられたヨーロッパによる搾取と虐待がイースター島に暗い影を落としていることも見落としてはならない因子のひとつだという。
そう考えると、前回のブログにひとつのメッセージを付け加えることができる。ヨーロッパを源流とする人々に告ぐ。自分たちの過去を省みることなく、世界にあまた存する尊重すべき固有の文化を一方的に批判するだけが能ではないと。