北村 禎宏

2019 13 Oct

災害大国における国際的イベントの是々非々

 台風19号の被害の全容は13日の夕方現在いまだ掴み切れていない。幸い金曜日の最終便で関西に戻って来ることができたので、15号のときほど直接的影響を受けることはなかった。ただ、伊丹に着陸したのは門限ぎりぎりの20:57だったので、ドキドキものではあった。これまで一度だけ関空に降ろされたことがあり、そうなると自宅にたどり着くのは日付が替わった後になるので大変だ。

 昨日の二試合の中止は残念であったが、スコットランド戦の開催が決まってホッと一息ついて、あとは夜の中継を楽しみにするばかりだ。とはいえ、わざわざ欧州から応援にかけつけたファンのブーイングも聞こえてくるのは仕方のないところだ。もともとラグビーは、土砂降りになろうがドカ雪になろうが、滅多なことでは中止にならない骨太の競技だ。ただし、台風となるとそういうわけにもいかない。

 米国の人々はフロリダ近辺を襲うハリケーンを通じて理解することができるが、欧州の人々はハリケーンもタイフーンも体感したことはない。したがって、備える発想もなければ耐え忍ぶ文化も形成されてはいない。日本のプロ野球は慣れたもので、順延しながらスケジュールを消化することができるが、国際ラグビー協会の当事者の人々に代替日程や順延というワードは浮かばなかったのだろう。何せラグビーのワールドカップ史上初めての出来事という事実がそれを物語っている。

 来年はオリンピックを控え、25年には半年にわたる博覧会も開催される。前者においてはあまり高くない一定の確率で直撃台風に見舞われると想定できるし、後者にいたっては開催期間中に直撃台風が襲来する確率はかなり高い水準で読むことができる。台風災害に対する心の備えと忍耐が文化として根付いていない国々からも大勢の選手や観光客が訪れる。おまけに地震や噴火にも注意が必要だ。

 代替や順延が困難、もしくは多くの災害初心者を迎えるような国際的イベントを災害大国である我が国が積極的に誘致してよいものかどうか再考が求められるところだ。不可逆的に激甚化が進行している気象現象と時限爆弾的にカウントダウンが進んでいる地震に対してどう対峙していくのか、矜持を正すことを促す議論が出てくることを期待する。