北村 禎宏

2019 10 Jun

デジタル課税動き出す

 犯罪者と取り締まり当局はイタチごっこを繰り返すのが常であるが、ビジネスモデルの進化に対して法律は常に周回おくれで必死でくらいついていくことを余儀なくされる。かつてストーカー防止法が、法律の厳格な罪刑法定主義があるが故にメールを手段としたストーカー行為を取り締まることができないエアポケットがあった。

 ネットが社会インフラとなって四半世紀、ECが当たり前というよりむしろもっとも手近なショッピングチャネルとして完全定着した今。各国の協調とせめぎあい、そして当該企業のリアクションが注目される。

 支店や工場などの恒久的施設がない限り法人税課税の対象にはならず、物流拠点は恒久的施設に該当しないスキームは一時代までのリアルビジネスを前提にした基本的考え方だ。人間が活動する物理的拠点があって、人間同士が相対でが当事者として合意する取引が長かったので、それが前提であれば合理的な考え方といえる。ところが、一足飛びにカネと情報は国境を越えてボダーレスに社会が到来してしまった。我々の発想と打ち手がどこまで追いつくことができるか正念場でもある。

 情報こそがいまターゲティングされているGAFAの利益の源泉となる経営資源なので、固定資産税のごとく個人情報資産税が課税できれば気持ち的にはすっきりするが、実務的には守秘されるべき個人情報を課税の対象として把握することには論理的矛盾が内在する。しかも、個人情報は固定的なプロファイルよりも購買履歴や閲覧履歴、位置情報などダイナミックに変化したり増殖する情報がメインとなる。これではその掌握と課税は実務上お手上げだ。

 大阪での我が国のファシリテーション力に期待は薄いながらも注目したいところだ。米中欧の熾烈な経済戦争に割って入れる唯一の戦争的には平和国家のはずなので。

 それにしても、ノーブルオブリージュはフランス貴族のレガシーに過ぎないのか、ひろく欧米社会には個人を超えて企業にまで浸透している普遍的生きざまなのか。貧乏人は麦を食えの逆で、金持ちは施せという単純明快な教えなのだが、金を持ちはじめると際限がなくなってしまうのが私たち人間と組織の性だとしたら、まことに悲しい限りだ。
ビジネスエシックスがますます重要になってくるのは当然のことと思われる。