北村 禎宏

2019 23 Mar

とっくにターンオーバー

 景況感に陰りが見えてきた。統一地方選では、「民主主義の基盤が危うい」旨の論調が聞こえてくる。

 いずれも、とっくにターンオーバーしたわが国の現状と未来に対して、今すぐに正面から立ち向かいたくはないモラトリアムにすぎない。少子高齢化すなわち人口縮小に突入し、それに労働力不足が輪をかける社会においてグロスの経済成長(GDPの増加)は望むべくもない。代わりに得られるものは一人あたりの豊かさであり、求められるのは単位あたりの付加価値だ。

 その現実から国民の目をそむけさせ続けてきたアベノミクスの罪は重たい。取り巻きの忖度もいい加減にしなければならない。マクロ的には人口が減少することと、ミクロ的には偏りがより加速していくわが国において、民主主義の基盤が危ういのではなく、民主主義を標榜するために敷いている小選挙区制や地方自治を前提としている現行制度がインフラとして機能しなくなりつつあるというのが正確な描写だ。

 機会平等と結果平等で考えると、前者のみに依拠した現状の制度疲労は著しい。投票や議員定数という機会を平等に近付けたところで、投票する当事者の
余命や経済力の格差は著しい。加えて結果を平等にする各種施策は濃淡偏った形でしか便益者に機能しない。

 そうなると、その二項対立概念自体がフレームワークとしては脆弱で、弁証法的にそれらを複層構造化した新たなロジックツリーの構築が求められていることになる。

 そのデザインは少しやっかいであるが、その先に新しい民主主義のインフラストラクチャーが見え隠れしている。