北村 禎宏

2020 17 Feb

変わる潮目

 トヨタの労組が新たな賃上げの仕組みを要求すると報じられたのは昨年暮れのこと。ベアの原資を個人の評価に応じて5段階に分けて配分する制度の提案を検討すると報じられた。いよいよその本番の20年春闘が始まった。

 労働組合のそもそもの成り立ちは、弱い立場の被雇用者が団結することで経営者と対峙する立場とパワーを得ることだ。したがってコンセプトは弱者救済、結果平等がこれまでであった。すなわち“一律”の実現である。

 長期雇用が前提で、かつ第一線を退いた以降は生活的経済的リスクがさほど高くない時代においては機能した賃金カーブがもはや適合しなくなった。現場でのワークを下支えしているのは間違いなく20代30代の若者たち。マネジメントの最前線で活躍しているのは40代から50代前半の油がのりきったビジネスパーソン。

 若者たちは働きに応じてもっともらってもよいと感じているのは今に始まったことではなく、
油がのっている世代は教育費がかさみ、加えて親の介護や自分の老後資金に備える必要がでてきた。個人の状況とニーズは複雑に多様化している。生涯にわたってどのようなフローとストックが最適なのか、それぞれがマクロ、ミクロの両面で捉え直さなければならないときにきている。

 ベースアップをは賃金テーブルの書き換え(底上げ)だ。従来の評価は昇級、昇格の階段をどれだけのスピードで駆け上がるかにつながる、もしくは一時金である賞与の原資配分ウェイトに反映されるだけであった。

 従業員ごとに異なるピッチでテーブルの書き換えをするとなると、賃金テーブルのメンテナンスに手間と工夫が必要になる。IT環境が整った現代においてはさほど高いハードルではないが、全体像と個々の状況を可視化するには一苦労を要すると想像される。

 業種業界によっては、「春闘?、何それ?、やってたのね…」というのも実体だろう。いろんな潮目が大きく変わりながら令和スタンダードが徐々に姿を現しつつある。