北村 禎宏

2020 27 Jan

ヒトとモノ

 地球レベルでヒトとモノの動きが最高潮に達したとき、我が世の春を謳歌できる生物たちがいる。侵略的外来種の国境を越えての制御は厳しく行われており、人間の意図的悪事による比較的大型の動物の移動に対しては一定の効果があると考えられる。見えるし捕まえることもできるからだ。ところが、ヒアリのサイズまで小さくなるとちょっとやっかいなことになる。それがウイルスになると、手に取れないどころか目に見えないのでまったくのお手上げだ。

 これまで人類は三大天敵と闘い続けてきた。「戦争」「飢餓」そして「感染症」の三つだ。いずれもかなりのレベルで克服しつつあるが、いまだゼロには至ってない。戦争については、数千万人単位の犠牲者が出るような事態は起こりにくい時代になったと言えるが、一歩間違えると数億単位の死者をもたらす全面核戦争の危機が皆無とは言い切れない。

 世界には飢餓にさらされている人々が未だ数億人の単位で存在する。天然痘など根絶に至った感染症も少なくないが、そこはそれウイルス諸氏も遺伝子をもつ生物 である。

 突然変異を繰り返して、結果適者となったものが猛威を振るうに至る。
今回のウイルスは最高の環境下で拡大をはじめた。場所が中国で、時期が春節とは、これ以上の好カードはないだろう。中国からのインバウンドの人々を強制的に送り返す国、現地の邦人をチャーター機で帰国支援する国とそれぞれの対応が始まったが、潜伏期間が二週間あることから既に未来は起こっていると言える。

 ICTの急速な進展でヒトとモノの動きの可視化が可能な時代がすぐ足元にまできているのはビジネスの上では好ましい限りだ。マーケティングやプロモーションの世界が劇的に変化する兆しが感じられる。その一方で、ヒトとモノの動きの制御には地球レベルで有効なマクロ的システムは存在しないし、これからもしないだろう。上記のごとく後手でミクロ的に対応するのが精いっぱいである。

 中国政府が「戦い」という言い方をするのは至極もっともな表現で、その意気込みのほどが伝わってくる。それぞれが生き残りをかけた生存戦争が拡大しつつある。