北村 禎宏

2018 19 Nov

パイロットも人の子なれど

 パイロットの飲酒検査が各航空会社任せで、内輪の論理であんじょうよく実施されていることが発覚した。バスやタクシーとは異なりバックアップ体制が整ったコクピットではあるが、由々しき問題だ。

 そもそも血中からアルコールを完全に排除するには、12時間でも到底足りない。多くの市民が、規定値未満であるもののアルコール分ゼロではない状態で社会生活を営んでいるのが実態だ。二日酔いで午前中ゾンビ化しているビジネスパーソンも少なくない。

 パイロットとはいえ、嫌なこともあれば、憂さも晴らしたいし、アルコールに頼る人もいて悪くはない。クローズドなコクピットで肌の合わないキャプテンと数時間以上缶詰になる国際線の副操縦士は特にストレスもさぞ大きかろうことは想像に難くない。

 しかしながら、ロシアでウォトカをがぶ飲みし、欧州でワインを浴びるように飲んでしまっては24時間が経過しても操縦桿を握ってはならない。今の時代、電子タバコをやっていないことを証明する術は当事者も周囲も持ち合わせていない。科学的検査もさることながら、これはエシックスの問題だ。

 私たち人間は依存症の虜にされる性から逃れられない。アルコール、ニコチン、糖質、ギャンプル、各種薬物と周囲を取り囲まれてどこまで自制できるのかが問われている。結局のところ、米、大麦、小麦、芋、トウモロコシ、葡萄などがサバイバル競争の究極の勝利者で、私たち人類はかかる植物種の奴隷として日々を暮らしているという夏井睦氏の議論には大いに納得させられる。

 もはや消費者を虜にすることができなくなったファション業界の未来は予断を許さないが、依存症に巻き込む手立てがないわけではない。それは、タイムセールやポイントX倍付けなどの売り方ではなく、プロダクトで実現させなければ根源的問題解決にはならない。