武田 尚子

2018 19 Mar

インポートランジェリーの挑戦

先週、ランジェリー専業インポーターの展示会が多く開かれたのだが、そこでインポートランジェリーの市場がますます縮小していると痛感した。

1990年代後半のピーク時でさえ、インナーウエア市場全体の数パーセント(つまり1割はいかない)といわれたが、今はもう微々たる比率なのではないだろうか。それだけに生き残りにかけて皆必死なのだが、現実はなかなか厳しい。

​彼らインポーターの扱う商品をパリの展示会で総合的に見ている立場としては、もっと日本の消費者に届かないものかと歯がゆい思いがする。

 

インポート物は為替レートに左右される(特に昨今の円安は厳しい)のをはじめ、原価率が高いのでいかに価値をつくっていくかが決め手になる。かつてはバストが変わる、あるいはインポートならではのレースや素材といった具合に、インポートの優位性というか、高価格な分、インポートならではの特長があったのだが、グローバル化でドメスティックとインポートにあまり差のなくなった昨今は、その「価値」を作っていくこともなかなか難しい。

 

片や、趣味が高じて個人でインターネット販売などを手掛ける動きもあり、多様化はしているだろうが、どこの業種もプロとアマの差がなくなり、プロが売り上げを喰われているのは明白だ。

 

ランジェリー専業インポーターの老舗であるアルテックスは、昨年、経営の世代交代とともに、事業の大幅改革を行った。

久しぶりに展示会に伺おうと、案内状をもとに迷い迷い、(半分パニックになりながら)原宿の神宮前2丁目住宅地にある会場に到達すると、そこは新しい直営店「MIKEL BLUCK FACTORY」(神宮前2-15-9)だった(同じ建物の上に事務所や倉庫も)。

ガレージを改装したという店内は、通常のランジェリーショップとはかなり異なる。10年以上存在しているような隠れ家的雰囲気で、まるでヨーロッパやアメリカにありそうな古着屋のようでもある。

 

創業者の父親から事業を受け継いだ長女の西原理恵さんは、もともと70年代UKロックのファンということで、店内もそういった小道具がちりばめられている。昔、原宿などにはこういう店あったなあと、懐かしい気持ちでいっぱいになった。

そういう中で、フランス「メゾンクローズ」のモダンでセクシーなランジェリーや、バストアップ機能の高い「チェスニー・ビューティ」のブラジャーなどがしっくり馴染んでいる。

店としては立地面からみても限定された固定ファン中心になるだろうが、ランジェリーの新しい売り方を見たようで好感が持てた。

​そもそも​インポートランジェリーの世界は、その美意識も店作りもステレオタイプすぎるのが問題なのではないか。もっと新しさや多様性があっていい。

そういう意味では同社にはEコマースなどと合わせて新しい市場を開拓していってほしいと願う。

理恵さんが抱えているのはギターではなく、愛犬。